「講談社」 1400円(税別) 2023年 10月発行 |
『列』 (最新刊)
本としては、24冊目になります。自分のキャリアを分けるとしたら、『カード師』が第二期のトリのような存在で、この『列』から、第三期が始まると思っています。
大勢の人達が、どこまでも続く真っ直ぐな列に並んでいる。でも彼らは誰も、自分がなぜ並んでいるのかわからない。
現代を描くと同時に、普遍的なものを描き、その主人公が、時代の何かを象徴している。この小説を書けたかどうかは、自分のキャリアにとってとても大きなことだと思っています。
第三期、の意味は、こういう超現実的な要素を取り入れるものをこれから書いていく、という意味ではなくて、総合小説というか、色んなテーマが混ざり合い一つになっていく広大な小説が多かった第二期から、もっと小さな世界に絞って濃密に書くような、第一期に近づくということです。でももちろん、原点回帰だけでなく、第二期で培ったものも、当然活かしていくつもりです。
短い小説なのに、書き終わるまでとても長い時間がかかりました。でもその理由は、読んでいただけたらわかると思います。
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「河出書房新社」 2250円(税別) 2022年 7月発行 |
『自由対談』 (新刊)
本としては、23冊目になります。デビュー20周年を記念した、初対談集です。見て頂くと分かる通り、本のデザインが、初エッセイ集の『自由思考』と対のようになっています。
総勢33名、36本の対談・座談会が入っています。桃井かおりさんから始まり、大江健三郎さんで終わるという、とても豪華な対談集です。450ページ近くてボリュームがあり、全ての対談が二、三段組になっていまして、本来なら2、3冊分になるものを、1冊にしています。
読んで頂くと、勉強や教養とはまた違う、「知的興奮」のような感覚を、味わっていただけるのではないかと思います。僕はともかく、対談相手の方々が凄いかたばかりなので、とにかく面白いです。
いい対談集になったと、しみじみ感じています。 ゆっくり長く、味わえる本になっていると思います。様々なかたが様々な角度から僕の小説を論じたりもしていますので、僕の文学の一つの解説本にもなっています。 |
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(最新刊) |
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「河出文庫」 760円(税別)2024年 7月発行
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『自由思考』(河出文庫)
こちらは、2019年刊行の単行本が、2024年に文庫になったものです。
その間、日本や世界で様々なことが起こって、時事問題も含んだエッセイ集として、たとえ文庫といってもそれらにふれる必要があり、単行本にはない新しい時事エッセイを5つ収録しました。そして、時事以外の加えたいエッセイもありましたので、通常のエッセイも新たに4つ(新しいのは合計9エッセイ)と、文庫版あとがきを収録しています。そのかわり、単行本から3つ、時事エッセイを省くことになりました。
その理由は、文庫本あとがきに書いているのですが、単行本刊行は2019年で、その時の時代の空気で読むからこそ感じられるものや、今読むと大分説明を加えないとわからないものもあり、全体のバランスを考えた結果でした。(ページ数が増えると値段が上がるので、それを避けたかったのもあります)
結果的に、単行本を持っているかたは、文庫にはない3つのエッセイが入っているものを持っている、ということになりますし、文庫を購入するかたも、2019年当時だからこそ感じられるものが省かれて、そのかわりに新しいものが色々入っているのだから、まあいいかな、と思ってもらえるかなと考えました。
いずれにしろ、僕の唯一のエッセイ集です。様々なタイプのエッセイが収録されています。ぜひ読んでくださると嬉しいです。
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「河出書房新社」 1512円(税込み)2019年 7月発行
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『自由思考』(河出書房新社) 初めてのエッセイ集で、こちらは単行本です。
デビュー17年分のエッセイが、111本、収録されています。あとがきを入れて、4つの長めの書き下ろしエッセイも収録されています。全体的に、加筆もしています。
T がエッセイや文学論など、U が社会問題など、V がエッセイや受賞関連の言葉という風に、大まかに分かれています。ふざけ倒したものから真面目なものまで、振り幅の大きいエッセイ集となっています。
この中の、「震災の時」は、現物は確認していないのですが、英訳されて、フィリピンの教科書に載ってるそうです。「文化も救ってくれる」は、時々、日本の試験問題にもなってるみたいです。そういえば、『何もかも憂鬱な夜に』や『惑いの森』なども、時々試験問題になったりしているそうです。
「不惑を前に僕達は」は、大きな反響のあったエッセイで、恐らく僕がこれまで書いた全ての「文」の中で、最も読まれたものではないかと思います。 |
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(新刊) |
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「朝日文庫」 850円(税別)2023年 9月発行
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『カード師』(朝日文庫)
小説としては、21冊目になります。表紙のイラストは海外でも活躍する目黒ケイさんです。格好いいです。
主人公は占いを信じていない占い師で、かつ客を翻弄する違法賭博のディーラーでもあります。ある依頼によって、様々なことに巻き込まれていきます。
古来から、人は先のことがわかれば悲劇を避けられると願い、占いに祈りを捧げてきました。カードはめくるまで何が出るかわかりませんが、それは生きてみないとわからない人生そのものだとも思います。その切なさと、裏返しにある希望を書いたつもりです。
こういう小説の書き方としては、この小説で、行き着くところまで行ったと感じています。僕のキャリアを期間で分けるとすると、これは第二期の最後の小説で、一つの達成だと自分では思っています。ですので、次作からは第三期の始まりです。
「あなたは赤いカードを選ぶ」。ぜひ読んでくださると嬉しいです。 |
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「朝日新聞出版」 1800円(税別)2023年 5月発行
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『カード師』(朝日新聞出版) こちらは単行本になります。こちらも表紙のイラストは目黒ケイさんです。
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(新刊) |
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「幻冬舎文庫」 870円(税別)2022年 11月発行
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『逃亡者』(幻冬舎文庫)
表紙のイラストは、宮島亜希さんです。とても格好いいです。小説としては20冊目となり、相応しい作品で20の節目になったと思っています。
第二次大戦下、ある作戦を成功に導いた伝説の楽器を隠し持ち、逃亡する現代の男の物語です。
僕は出身は愛知県ですが、ルーツが長崎で、いつか書く、とずっと決めていたテーマです。長篇としては、初めて「歴史」に本格的に取り組みました(舞台は現代です)。毎回言ってますが、でも総合的な意味で、『カード師』と共に、これは一つの到達点だと思っています。
犬の鳴き声から小説を始めた理由は、自分でも後から気づきました。あの冒頭の犬は、つまり、読者さんを呼んでいたことになります。文庫本のあとがきで、時が経ったこともあり、少し解説もしています。
「その命は必死に使え。」潜伏キリシタンから第二次世界大戦、そして現代に。ぜひ読んでいただけると嬉しいです。 |
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「幻冬舎」 1700円(税別)2020年 4月発行
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『逃亡者』(幻冬舎) こちらは単行本になります。単行本の方は、本の質感と色合いがとてもいい感じです。
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「朝日文庫」 630円(税別)2021年 8月発行
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『その先の道に消える』(朝日文庫)
19冊目の本になります。表紙は、右にある単行本の時のHajimeさんの作品を、文庫用にトリミングしたものです。こちらもかなり格好いいです。
ある〈緊縛師〉の死体が発見されるところから、物語が始まります。
緊縛で使われる麻縄から、神社の注連縄や日本神話など、「日本とは何か」にまで向かう物語です。中盤であることが起こるので、あまり多くは言えないのですが、語り手が物語から疎外されていく、という要素や、生きるとは、人生とは、という大きなテーマも含まれています。
僕にとって、一つの到達点になったと思っています。拳銃を、持ちやすいもの、という、手触りからも捉えた『銃』という小説で僕の作家生活は始まったのですが、この小説では、麻縄という「もの」自体にも、着目しています。
作中の警察署がなぜ「蜷川署」なのかは、実は、僕のある小説を、蜷川幸雄さんが映画化してくださるはずだったんです。それは実現しなかったのですが、ゲネプロに呼んでくださったり、大変よくしてくださって、亡くなってしまったことがとても悲しくて、密かな追悼の意味でした。
「あまりに、指に馴染み過ぎるものは、危ないのかもしれない」
ぜひ読んでくださると嬉しいです。 |
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「朝日新聞出版」 1400円(税別)2018年 10月発行
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『その先の道に消える』(朝日新聞出版) こちらは単行本になります。表紙は、世界的なロープアーティストで緊縛師である Hajime Kinoko さんの、素晴らしいオリジナル作品になっています。本当に素晴らしい。
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「キノベス!2018」第1位
「中公文庫」 720円(税別)2020年 5月発行
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『R帝国』
(中公文庫)
資本主義で、民主主義で、経済大国であるのに、独裁政権、全体主義になってしまった国の物語です。携帯電話と会話ができるような近未来が舞台ですが、今の日本と世界を意識して書きました。文庫本のあとがきにも書いたのですが、読み返してみて、2016年に連載が始まった小説ですが、今年(2020年)に書いたのではないか、と錯覚することになりました。
「朝、目が覚めると戦争が始まっていた。」の一文から始まります。ディストピアと呼ばれるジャンルの小説です。現在の日本の右傾化に僕は危機を感じていて、状況はかなり深刻と考えています。作中に、「委縮は伝播する」という言葉が出てきますが、この小説の委縮はゼロです。委縮する作家ほど、みっともない存在はないので。
独裁政権下に生きる、矢崎、栗原、アルファ、サキという四人の男女が出てきます。「悪」として登場する政治家の加賀という男は、これまで僕が書いてきた「悪」の中で、また特別な存在になりました。ぜひ読んで下さると嬉しいです。
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「キノベス!2018」第1位
「中央公論新社」 1600円(税別)2017年 8月発行
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『R帝国』
(中央公論新社) こちらは単行本になります。本のデザインが、表紙を外すと一枚の絵になっています。新聞連載時の挿絵も描いてくださった猫将軍さんの書き下しです。ものすごく格好いいです。
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ドゥマゴ文学賞受賞作
「文春文庫」 560円(税別)2019年 7月発行
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『私の消滅』
(文春文庫)
17冊目の本になります。
ある男が、山林の古びたコテージに行き、そこに置かれていた手記を読むところから物語が始まります。
人間の精神の奥の奥、を描き出して、人間の存在そのものを問うと同時に、ミステリーの手法も取り入れて、少しだけノンフィクション的な要素もあります。
この小説も、僕にとっての一つの達成だったと、今でも思っています。小説という表現において、こういう領域にまで来ることができた、と自分なりに感じることになりました。
エッセイ集『自由思考』に収録されている受賞エッセイでも書きましたが、この小説でドゥマゴ文学賞を頂けたことは、太宰治が亡くなった年齢を越えた僕にとって、とても大きなことでした。
「きみはあの時本物の犯罪者になり損ねた。」ぜひ読んで下さると嬉しいです。
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ドゥマゴ文学賞受賞作
「文藝春秋」 1300円(税別)2016年 6月発行
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『私の消滅』
(文藝春秋) こちらは単行本になります。表紙は塩田千春さんの作品です。
文庫では、同じ塩田さんの作品を、別の角度から撮影したものを、なんと塩田さんご自身から提供していただきました。
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「毎日文庫」 750円(税別)2018年 11月発行
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『あなたが消えた夜に』(毎日文庫)
16冊目の本で、初めての新聞連載(毎日新聞・夕刊)小説です。
毎日新聞出版さんが毎日文庫レーベルを始めることになり、その第一弾、第一冊目となりました。記念的な作品になりましたので、「あなたが消えた夜にー番外編」、も巻末に収録しています。作家にとって、文庫レーベルの第一弾になることは、本当に得難い経験でした。
突如発生した連続通り魔事件の容疑者、”コートの男”を、所轄の男性刑事と、捜査一課の女性刑事が追うストーリーです。これまで刑務官を主人公にしたことはありましたが、この小説では、初めて刑事を主人公にしました。
女性刑事のほうは、僕の短編に時々出てくるユニークなタイプの女性の系譜にあるもので、個人的にとても気に入っています。かなりシリアスな物語ですが、時々いい化学反応を起こしていると、作者としては思っています。
テーマは「無意識」です。後の「私の消滅」「その先の道に消える」に受け継がれていくテーマになります。
初めての警察小説で、「人間の不自由さ」を内面だけでなく、状態としても表すための方法の一つとして、〈管理官〉より上の階級の人物達はすべて霧がかかったように顔がぼやけていたり、組織は少しだけカフカ的です。主人公達は、そんな警察組織にも悩まされます。
読み進めていくと、なぜ本の表紙が少し燃えているデザインなのか、徐々にわかってくると思います。
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「毎日新聞出版」 1600円(税別)2015年5月発行
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『あなたが消えた夜に』(毎日新聞出版)
こちらは単行本です。文庫本の表紙に描かれている女性の絵は、新聞連載時の挿絵の一つを、担当してくださったゴトウヒロシさんが色付けしたものです。
椎名めぐみ、を描いたものになります。すごい迫力です。
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「文春文庫」 580円(税別)2018年 1月発行
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『惑いの森』
(文春文庫)
作品としては、12冊目の本で、その文庫版になります。初のショート・ストーリー集です。松倉香子さんによる素晴らしい挿絵も添えられています。表紙の絵がすでにもう、この作品世界を見事に現してくれています。
アマゾン上にあるWEB文芸誌、マトグロッソで連載していたショートストーリー全28話に、新たに書き下ろした22話を加え、全50話の本になりました。文庫では、この本が出た経緯も、あとがきのあとがき、という感じで収録しています。
それぞれ独立したストーリーですが、それぞれが緩やかに繋がっています。
ある女性を欲した森、蜘蛛と暮らす青年、地獄で向かい合う二人、鳥の剥製に操られる男、伝えられなかった言葉が届く郵便局、くつを探し続ける女性、役目を終えた物達が集まる博物館、逮捕され、裁判を受ける小説家などなど、50話です。僕っぽいストーリーや、僕には意外なストーリーなど、様々です。
バラエティに富んでいると思います。こういう本を、ずっとつくってみたかったです。楽しんでもらおうと思って50話にしたのですが、ずいぶんと時間がかかってしまいました。
当時、デビュー10年を記念して、いい本がつくれたと自分では思っています。
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「イーストプレス」 1500円(税別)2012年 9月発行
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『惑いの森』
(イーストプレス) こちらは単行本です。単行本では、松倉さんの挿絵が二色カラーになっております。
この中の「出口なし」は、独立した話になるようにほんの少し僕が加筆したものが、英訳され、主にアメリカの作家達によるオムニバス本に収録されています。「寒い日に」は確か、訳されて台湾のサイトに載っていると思われます。
(単行本版の目次のページで、*のマークがついているのが書き下ろし作品です。収録されている「狭い部屋」は初版では目次のページで*のマークがついていませんが、書き下ろし作品となっています。第2版からは直ってます。) |
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「集英社文庫」 800円(税別)2017年 6月発行
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『教団X』
(集英社文庫)
15冊目の本で、僕の最長の小説になります。
あるカルト教団にまつわる物語です。二人の教祖と、四人の男女の「運命」が絡まり合い、様々な事件がある中で、この国を揺さぶるテロリズムへと発展していきます。
人間とは何か、悪とは何か、生きるとはどういうことなのかという、文学における問いに正面から答えようとした小説です。
ここに出てくる沢渡という人物は、これまでの僕の「悪の系譜」の中で、最も深い悪を体現していると思っています。「沢渡の過去」の章は、僕の全作品の中で、最も深刻なシーンを目指しました。「高原の手記」の章では、『銃』や『遮光』のような空気感があると思います。
そして、強い光と希望を込めました。
書いた当時、これは僕にとっての『カラマーゾフの兄弟』 にしようと思いました。そして今、ここからさらに発展させた小説を書いていこうと思っています。
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「集英社」 1800円(税別)2014年12月発行
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『教団X』(集英社)
僕の15冊目の本で、こちらは単行本です。単行本の方は、タイトルが浮き字になっていて、とても存在感のある本になっています。
芥川賞でもなく、映画化もされていない純文学小説であるのに、異例の部数の本になりました。この度文庫本が刊行されたのですが、そちらもさらに広がっています。
ヘイト本が売れている、という悲しいニュースが時々ありますが、この『教団X』は、反ヘイトの本であり、ヘイト本より売れています。純文学の可能性を見せることができた小説だと、作者としては勝手に思っています。これも全て、皆さんのおかげです。本当にありがとうございます。
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「河出文庫」 550円(税別)2017年 5月発行
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『A』(河出文庫)
14冊目の本で、13の短篇が収録された短篇集です。
本のデザインが、本当に素晴らしいです。インテリアとして置いておいてもかっこいいのではと感じています。
収録作は、 『糸杉』 『嘔吐』 『三つの車両』 『セールス・マン』 『体操座り』 『妖怪の村』 『三つのボール』 『蛇』 『信者たち』 『晩餐は続く』 『A』 『B』 『二年前のこと』です。あとがきを入れて約270ページで、なかなかのボリュームになりました。
シリアスな作品や、『世界の果て』の「ゴミ屋敷」や『惑いの森〜50ストーリーズ〜』の「Nシリーズ」のようなユーモアテイストのもの、官能ものや前衛的なもの、戦争ものまで、バラエティに富んだつくりになっています。
それぞれ独立した短篇ですが、どこかで緩く繋がっています。7年にわたる各短篇小説をこういう形で一冊にまとめることができて、とても嬉しく思っています。
我ながら、いい短篇集になったと思っています。時々こうやって短篇集を出版していきたい、と思っているのですが、長編のスケジュールが過密なので、次の短編集は随分と先になってしまうと思います。
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「河出書房新社」 1400円(税別)2014年 7月発行
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『A』(河出書房新社) 僕の14冊目の本で、単行本の方では、タイトルが金メッキに装飾されてまして、とても美しいです。坂上チユキさんの『フェニックス』という絵を使用させていただきました。
この度文庫本が刊行されたのですが、中国での虐殺を書いた『A』、従軍慰安婦について書いた『B』は、今の時代に必要な小説だと、勝手に思っています。 |
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「幻冬舎文庫」 460円(税別)2016年 4月発行
2018年春、映画化
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『去年の冬、きみと別れ』
(幻冬舎文庫)
13冊目の本が、幻冬舎文庫になりました。僕のあとがき風エッセイが収録されています。
タイトルは一見僕の小説っぽくないですが、読んでみると、完全に僕の小説となっています。本のデザインも、迫力があって格好いいです。
本格的にミステリーの技法を取り入れていますが、テーマはもちろん純文学です。 その人が気づいていない、その人の真の欲望と、人がその「一線」を越えてしまう「瞬間」と、その「領域」にまつわる物語です。
この小説は、僕にとって一つの達成だと思っています。この小説は、後の『私の消滅』にもいかされています。
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「幻冬舎」 1300円(税別)2013年 9月発行
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『去年の冬、きみと別れ』
(幻冬社) 僕の13冊目の本で、こちらは単行本です。
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「新潮文庫」 460円(税別)2015年 3月発行
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『迷宮』(新潮文庫)
僕の11冊目の本が、新潮文庫になりました。「迷宮について」という僕の解説風エッセイが収録されています。
一家が密室で殺害され、犯行現場が色鮮やかな折鶴で飾られた迷宮事件、別名「折鶴事件」と呼ばれた事件の解明を中心に、物語は進んでいきます。
謎と真相、そして人間の暗部の物語です。謎に満ちた女性、元刑事の探偵、失踪中の男、ライターなど、様々に出てきますが、主人公の内面を軸とした物語になります。
「君は選ばなければならない」主人公が小さい頃に精神科医に言われた言葉から、この小説は始まります。全体的に、危うい空気が漂っていると思います。
デビュー10周年記念作品です。10周年記念の作品が、順番的にちょうどデビュー媒体の新潮社になったのは、何やら不思議な感じがします。
この小説がなければ、『去年の冬、きみと別れ』は書けなかったと思っています。
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「新潮社」 1300円(税別)2012年 6月発行
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『迷宮』(新潮社) 僕の11冊目の本で、こちらは単行本です。
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「河出文庫」 470円(税別)2015年 4月発行
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『王国』(河出文庫)
僕の10冊目の本が、河出文庫になりました。『掏摸[スリ]』の兄妹編です。『王国について』という僕の解説風エッセイが収録されています。
どちらから読んでも、どちらかだけ読んでも、楽しめるようになっています。世界観はリンクしていますが、独立した作品です。
単行本のデザインとほぼ同じですが、少し女性の雰囲気が変わっていて、帯を取ると、また少し違います。
『掏摸[スリ]』に登場した木崎が出てきます。もしかしたら『掏摸[スリ]』の主人公も、少し出てくるかもしれません。反対に、この『王国』に登場する矢田という男は、『掏摸[スリ]』にも少し出てきています。
都会の片隅で「ある特殊な仕事」をしているユリカという女性が、ある陰謀に巻き込まれていく物語です。月、というのが重要なテーマになっていまして、読んだ人は気づいたかもしれませんが、この小説の場面は全て夜になっています。
文体に月のイメージ(光、水、煙《雲》)を溶け込ませて、逃亡や罠、策略、裏切りなど、エンターテイメント性を全面に出しながら、運命、存在、生命の輝きなど、純文学のテーマを描いています。自分の人生を、奪われるということ。訪れた運命を、拒否するということ。テーマは大きいです。
女性の一人称での長編は初めてで、そのおかげで文体に様々な工夫ができるようになりました。『掏摸[スリ]』の本の左側に並べると、かっこいいデザインになっています。
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「河出書房新社」 1300円(税別)2011年 10月発行
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『王国』(河出書房新社) 僕の10冊目の本で、こちらは単行本です。
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『ウォール・ストリート・ジャーナル』2013ベスト10ミステリー
2018年映画化
「講談社文庫」 660円(税別)2013年 10月発行
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『悪と仮面のルール』
(講談社文庫)
僕の9冊目の本が講談社文庫になりました。装丁もかっこいいです。『悪と仮面のルールについて』という僕の解説風エッセイも収録されています。
「掏摸〈スリ〉」に続いて、英訳の第二弾になります。ジャパニーズノワール、という感じで紹介されています。
『邪』の家系に生まれついた主人公が、顔を変え、他人の身分に成りすまし、ある行為をする物語です。
テロや殺人や陰謀などが多発します。そういった大きな物語の奥に、小さく悲しい物語があった、という小説です。幸福に対する侮蔑、人間の内面の闇と希望、連続されるルール違反、反復と因果、罪と命と回復にまつわる小説です。
中の扉ページもカッコよくデザインされています。こういうのもいいなと思いました。作品に合っています。
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「講談社」 1600円(税別)2010年 7月発行
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『悪と仮面のルール』(単行本) 僕の9冊目の本で、こちらは単行本です。
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大江健三郎賞
受賞作
『ウォール・ストリート・ジャーナル』2012ベスト10ブック
「河出文庫」 470円(税別)2013年 4月発行
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『掏摸[ スリ ]』(河出文庫)
僕の8冊目の本が河出文庫になりました。「掏摸〈スリ〉について」という、僕の解説風エッセイも収録されています。デザインは単行本と同じですが、帯を取ると、少しだけ変わっています。最高に格好いいです。
完全にのめり込んで書いたことをよく覚えています。小説に自分が奪われる感覚がありました。この小説を書くことができて、本当に良かったです。様々な国に翻訳されています。
都会に動く天才スリ師の物語ですが、過去の友人や恋人、売春婦とその子供、そして最大の悪の人物である木崎など、様々に登場します。
小説の魅力、本の魅力を、能力の許す限り、最大限に出そうと考えました。純文学ならではの深みを追求しながら、読みやすく、かつ物語としてもスリルのあるもの。文章を次々読む快感というか、小説でしか味わえない、「文章の快楽」を念頭に置きました。悪だけでなく、温かさ、も意識しました。
どこにでもあるような小説はいらないです。僕は僕の小説を書いていこうと、密かに決意した小説でもあります。『その入ってはいけない領域に伸びた指、その指の先端の皮膚に走る、違和感など消えうせる快楽を――』ぜひ読んでみてください。
あとがきで「旧約聖書」について少し触れていますので、誤解のないように書きますと、僕は特定の宗教を信じたりはしていませんが、伝統的な宗教の聖典はほとんど読み、それぞれに感銘を受け、敬意を抱いています。
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大江健三郎賞
受賞作
『ウォール・ストリート・ジャーナル』2012ベスト10ブック
「河出書房新社」 1300円(税別)2009年 10月発行
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『掏摸[ スリ ]』 僕の8冊目の本で、こちらは単行本です。
文庫本も同じですが、これは、スリ、という、カタカナのルビつきタイトルです。
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2012年舞台化
「文春文庫」 533円(税別)2013年 1月発行 |
『世界の果て』(文春文庫)
7冊目の本が文春文庫になりました。初めての短編集です。表紙のイラストは魚住幸平さんです。作品が絵となって溢れ出したようで、大変素晴らしいです。ちなみに魚住さんと僕は同い年です。「世界の果てについて」という僕の解説風エッセイも収録されています。以下、収録作です。
『月の下の子供』
幽霊の出る家と、不動産屋で働く青年の物語です。 「土の中の子供」とイメージの繋がりがあります。
『ゴミ屋敷』
僕の小説の中で初めて、「笑い」を取り入れた小説です。ゴミ屋敷をつくり続ける男の物語です。
『戦争日和』
骨の降る部屋で奇妙な機械をつくる青年の物語です。時代が戦争に向かう時、人々の精神は単純化していきます。複雑な純文学は、それに対立するものです。戦争は大を考えるあまり、犠牲になる小を蔑ろにします。『憎悪は生き物だ、拡大を望む』という言葉が作中にありますが、単純化していく世界の中で執拗に小のことを考え続ける小説です。
『夜のざわめき』
初めて、小説家、を主人公にした小説です。この頃、僕はなかなか精神的にきつくて、それが色々な形で出てしまいました。様々な声(ざわめき)の中を、主人公が歩いていきます。
『世界の果て』
劇団「文学座」を母体とする「unks」によって舞台化されました。1 犬を持ち歩く男、2 画家、3 包丁を握る高校生(本人の自覚は中学生)、4 失踪者、の、それぞれの「世界の果て」と人生の問題を巡る小説です。それぞれタイトルをつけるなら、1は「犬を捨てる」、2は「無用の人」、3は「中学生の犯罪」もしくは「高みの世界」、4は「失踪」、5は「蒸発」もしくは「犬を握る」、かなと思います。一つの大きな物語として読むこともできます。読んでくれる人達の考える幅(自由)が大きい小説で、様々に解釈が可能です。
我ながらいい短編集だと思っています。こういう小説が集まる短編集は、今の時代には珍しいかもしれません。 |
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「文藝春秋」 1571円(税別 ) 2009年 5月発行 |
『世界の果て』 (単行本)
文庫本が発売されたのですが、こちらはハード・ブックです。僕の7冊目の本で、短編集です。 |
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『集英社文庫』 400円(税別) 2012年 2月発行
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『何もかも憂鬱な夜に』 (集英社文庫)
僕の6冊目の本が、集英社文庫になりました。
刑務官の主人公、元恋人、恩師、自殺した友人、そして死刑判決を受けた青年の物語です。この小説もまた、僕にとって非常に特別な作品になりました。
死刑制度、思春期の問題、大人になった後も悩まされる内面の混沌、芸術に対する想い、希望など、様々に込めました。
長編小説で、一人称を「僕」に変えた初めての小説です。文庫版あとがきにも少し書きましたが、僕の個人的なことも色々入っています。
解説は、ピースの又吉直樹さんが書いてくれました。あのように才能に溢れ、かつ相当な読書家でもある人からこれほど見事な解説を書いてもらえるのは、作家としてとても嬉しかったです。
生きていくには辛いことも、憂鬱になることも多いです。様々な人達の憂鬱な夜に、この小説が何らかのパートナーになってくれれば、書き手としてはこれ以上の喜びはないです。共に生きましょう。
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「集英社」 1200円(税別) 2009年 3月発行
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『何もかも憂鬱な夜に』 (単行本)
僕の6冊目の本になります。この度文庫本が発売されたのですが、こちらはハードブックです。
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2014年秋、映像化
『講談社文庫』 448円(税別) 2010年 7月発行 |
『最後の命』(講談社文庫)
僕の5冊目の本が、めでたく講談社文庫になりました。
デザインが、実際の本を手に取ると、ずっと見ていたくなるほどに美しいです。本屋さんなどで、一度見てくださると嬉しいです。これほどまでに内容と一致する写真があるのかと、個人的に驚きました。
世界と接するのに一枚の布を必要とした主人公。「今から、人に嫌われる話をする。読んだ人間の全てが、眉をひそめるような話を」と語らなければならなかった冴木。そして謎めいた、小さく悲しい香里の物語です。
一つの殺人事件をめぐる物語ですが、『悪と仮面のルール』で書いた善悪のテーマの根源が、この小説にあるように思います。
もっと広がってもいいとか、このまま埋もれていくのはもったいないという声を本当に多くいただいた小説で、今回このように講談社文庫になったことは非常に嬉しいです。相当な思いをこの小説には込めています。この小説が一番好き、という声を、読者さんから聞くことも多いです。
テーマはなかなか衝撃ですが、文章は読みやすいです。大切なことを、全力で書きました。小説、文学を愛する全ての人に、読んでいただけたらと思っています。
僕の文庫版へのあとがきと、佐藤康智さんによる解説も収録されています。 |
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TOEI COMPNY
2015年5月
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『最後の命』 (DVD)
監督は松本准平さん、主演は柳楽優弥さん、主題歌はCoccoさんで、2014年に公開された映画がDVDになりました。特典映像で、少しだけ僕が映ってます。
僕の初映像化作品で、ニューヨーク・チェルシー国際映画祭、脚本賞受賞作品です。
内面に深く残る素晴らしい映画ですので、ぜひ観ていただけたら嬉しいです。作家としての深い喜びを感じました。とても感謝しています。
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「講談社」 1500円(税別) 2007年 6月発行
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『最後の命』 (単行本)
こちらは単行本で、刊行は2007年です。 |
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芥川賞受賞作
「新潮文庫」 400円(税別)2007年 12月発行
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『土の中の子供』 (新潮文庫)
僕の4冊目の小説が、新潮文庫になりました。手元に置いていただけると嬉しいです...と、作者としては勝手に思っています。
暗い小説と言われることもありますが、僕は「悪意は人々の無関心の中で行われる」と思っていますので、こういう小説は重要だと個人的に思っています。右に書いたように、暴力自体を分析した小説ですが、運命や巨大なものに逆らう意志というものも意識しました。僕にとっては、そういう意志が必要だったりします。
単行本の時と同様、「蜘蛛の声」という短編も収録されています。僕はこの短編もとても好きです。文庫本ということで、井口時男さんによる解説も収録されています。こちらの方も、合わせて楽しんでくれると嬉しいです。
第9版から、カバーが新しくなりました。
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「新潮文庫」 400円 (税別)2013年 1月発行
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『悪意の手記』
(新潮文庫)
僕の3冊目の本が、新潮文庫になりました。「悪意の手記について」という、僕の解説風エッセイも収録されています。
「友人を殺してしまったある青年の手記」という小説です。手記1、手記2、手記3、で構成されています。
人をなぜ殺してはならないのか、という問いを、真正面から書いたものになります。こういう小説は、現代では珍しいものになってしまいました。
罪悪感の考察、意識と無意識、虚無、悪の分析、人の温度など、様々に込めました。青い服を着た少年、友人の武彦や祥子、リツ子、元刑事の探偵など、様々な人物も登場します。
こういう小説を残すことが出来てよかった、と思っています。僕にとって大切な本です。迫力と文章のうねり、ということも意識して書きました。
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芥川賞受賞作
「新潮文庫」 400円(税別)2007年 12月発行 |
『土の中の子供』 (新潮文庫)
こちらは前の新潮文庫版のカバーです。 |
芥川賞受賞作
「新潮社」 1200円(税別) 2005年 7月発行 |
『土の中の子供』 (単行本)
この度文庫本が発売されたのですが、こちらはハードブックです。僕の4冊目の単行本で、「蜘蛛の声」という短編小説も同時収録されています。
「虐待」ということがクローズアップされて語られることが多いのですが、僕としては、暴力そのものを分析し、戦争も含めたことを意識して書きました。落下するイメージと、そこから這い上がるイメージを交差させて、小説の根本に、様々な思いを込めました。
書き終えた時、ようやくここまで書けた、と思いました。あくまでも自分なりに、ということですが。賞を頂いたこともあり、本当に多くの人に読んでもらうことができました。感謝しています。 |
「新潮社」 1300円(税別) 2005年 8月発行 |
『悪意の手記』 (単行本)
文庫本が発売されたのですが、こちらはハード・ブックです。発行は2005年になります。 |
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野間文芸新人賞
受賞作
「新潮文庫」 370円 (税込)2010年 12月発行 |
『遮光』 (新潮文庫)
僕の2作目の小説が、新潮文庫になりました。値段を抑えてくれたみたいで、340円となってます(2版からは370円みたいです)。ある虚言癖の青年と、美紀という女性の物語です。
文庫解説に代えて「遮光について」というエッセイを、この文庫用に書いて、一緒に収録しました。
この小説の10章の太陽の場面は、僕の文学の中核のシーンだと思っています。様々に思い入れのある、僕にとって、本当に重要な小説です。
この小説がなかったら、今の僕はなかったと思います。作家にとって2作目というのは大切で、プロとしてやっていけるかどうかの試金石になることが多いからです。
応援してくださる方々、本当にありがとうございます。小説の未来は暗いですが、何とか抵抗しようと思っています。 |
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野間文芸新人賞
受賞作
「新潮社」 1400円(税別) 2004年 6月発行 |
『遮光』 (単行本)
文庫本が発売されたのですが、こちらはハード・ブックです。発行は2004年6月で、僕の2作目の単行本になります。 この作品で賞をいただけたのには、感慨深いものがありました。 |
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新潮新人賞受賞作、
芥川賞候補作
2018年、映画化
「河出文庫」 540円(税別)2012年 7月発行 |
『銃』 (河出文庫)
僕のデビュー作が、河出文庫、としてリニューアル刊行されました。短編小説「火」と、僕の解説風エッセイも収録されています。「銃」の内容は、当然ですが、新潮文庫版の「銃」と全く同じです。
拳銃を拾い、それを持ち歩く青年の話ですが、その中に意識の問題、無意識の問題、家族の問題、青年が抱える問題などを、色々と込めて書きました。意識の構造物のような小説です。
何かを持ち歩く、つまり何かを内面に抱えるということは、僕の小説の中心にあるものです。読み返してみて、やはり自分のデビュー作だなとしみじみ思いました。作家が一般的に自分のデビュー作に対してどういう感情を持つのかわかりませんが、僕はこの小説がとても好きです。
このように復刊となり、とても嬉しいです。皆さんのお陰です。本のデザイン、最高に格好いいです。 |
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新潮新人賞受賞作、
芥川賞候補作
「新潮社」 1400円(税別) 2003年 3月発行 |
『銃』 (単行本)
文庫本が発売されたのですが、こちらはハード・ブックです。発行は2003年3月で、僕の初単行本になります。 |
新潮新人賞受賞作、
芥川賞候補作
「新潮文庫」 380円(税込)2006年 6月発行 |
『銃』 (新潮文庫)
こちらは新潮文庫版です。新潮社の「銃」は、残念ながら、もう二度と手に入らないです。河出文庫として復刊しました。 |
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岩波文庫編集部・編
「岩波文庫」660円(税別) 2007年 2月発行
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『読書という体験』(岩波文庫)
各界の人が、読書についてのエッセイを書いています。その中に、僕が書いたものも入っています。 |
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新潮社・編
「新潮文庫」 400円(税別) 2006年 6月発行
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『空を飛ぶ恋』(新潮文庫)
様々な作家が、携帯電話にまつわるストーリーを書いています。その中に、僕が書いたものも入ってます。 |
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